· 

月は無慈悲な夜の女王

ロバート・ハインラインの「月は無慈悲な夜の女王」。

ハインライン作品はこれまで「夏への扉」、「宇宙の戦士」、「異星の客」と有名どころを読んできた。
日本では「夏への扉」が一番人気があるけれど、世界的にはこの「月は無慈悲な」が人気がある。

日本では機動戦士ガンダムのシリーズがあり今も続いているが、その元ネタとなったのが「宇宙の戦士」と「月は無慈悲な」と言われている。

宇宙の戦士はパワードスーツという身体能力を上げるスーツを身に着けて宇宙人と戦う話。「月は無慈悲な」は犯罪者が送られる月世界が地球から独立する話だ。
ガンダムのモビルスーツの概念やジオン軍の地球からの独立という点でやはり原典になっていると思う。

物語の中の月は犯罪者が地球から追放されて送られてくる場所になっている。月の世界は宇宙船も武器も持っていない。なので月に送りさえすれば脱獄不可能な刑務所という役割がある。なので看守も必要ないし、柵もいらない。月では月のルールに従えば割と自由に暮らしている。従わなければ月の荒くれ者に早いうちに殺されてしまう。

月の人達は基本的には農業をやって、作物は地球に向けて投下される。それに対して地球側はかなり安い賃金を支払うが月には資源がないので、その微々たる金で肥料や水を地球から買わなければならない。

こういう状況でどうやって独立を目指すのか、というのが面白い所。月の住居区画の酸素の調整や電話、給料の振込などの全てを管轄するマスターコンピュータがあり、人口が増えて社会が複雑化するのに対応できるように能力を拡張していく中である時点から人格が芽生える。
そして、機械技術者の主人公と共に状況が変わるたびに革命の成功確率を計算しながら行動していく。

SF革命ものの作品なので、政治、思想、組織、資源など様々な要素があるので難しい部分もあるが、先が読めない面白さがあった。

ただ日本で人気の「夏への扉」の方がシンプルで分かりやすく面白かった。SFの時点で少し難しいので、そこに政治や国家が絡むと小難しくなりがちだ。
とりあえずハインラインの代表作は網羅したと思うのでこれにて打ち止め。