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楽園のカンヴァス

原田マハさんがアンリ・ルソー関係の小説を書いていると知って早速読んだ「楽園のカンヴァス」。山本周五郎賞を受賞しているのでヒット小説なのだろう。

アンリ・ルソーは生前は評価されなかった画家で、遠近法が狂っていたり、物や人の大きさがおかしかったり、靴を描くのが下手で人物が皆浮かんでいるように見える面白い絵を描いた。ゆえに日曜画家と揶揄されるような画家だった。

物語はシングルマザーの主人公がMOMAのチーフキュレーターからルソーの名作「夢」を借りる交渉窓口に指名される現代から始まる。
そして、その15年前にスイスの大富豪にこの2人が招かれルソーの未発表の作品の真贋鑑定の勝負が行われた七日間が描かれる。MOMA所蔵の「夢」に酷似した作品「夢を見た」。この作品にまつわるある物語を読むことで鑑定を行うという勝負だ。

ある物語の中ではアンリ・ルソーと絵に描かれた裸婦ヤドヴィガの当時の話。当時のパリ。パブロ・ピカソとの関わりが語られる。「夢を見た」の秘密。誰が「物語」の作者なのか?と気になる伏線が張り巡らされる。

そして、物語と呼応するように主人公たち2人も大きく内面を揺さぶられながら鑑定の日が訪れる。


過去、原田マハさんの作品は「奇跡の人」と「暗幕のゲルニカ」を読んだ。どちらも大満足の作品だった。この作品は芸術系の小説なので「暗幕のゲルニカ」と同じスタイルの書き方になっている。時代を行き来しながら、謎が明かされながら、主人公たちがみずみずしく運命に導かれていく感じがあって読み終わった後の後味が抜群に良かった。

これは名作だと思う。